白いしるしー西加奈子(読書感想文その2)

 

「まっすぐなんて馬鹿らしい」

そんな考えが当たり前と思っていた私にとって、物語は異次元の優しさだった。

 

正直わたしは色んな裏切りも冷たさも経験してきて(おいおい)

世間をだいぶ冷めた目で見てる節があるんだけど、

そんな私の内部にある熱いものが、この純度の高い真っすぐな人たちの世界を覗き見することで、またグツグツしてきました。

 

東京が舞台でも、主人公たちは やはり関西弁バリバリの 西加奈子ワールド。

 

清々しいけど余韻が残る、ステキなお話でした。

 

西さんのまっすぐな願いが、きっと要領が悪くて社会では生きにくいだろうけど

自分の言動に責任を持ってるかっこいい主人公たちに乗ってわたしに伝わって来たので、そのドキドキをシェアしようという魂胆の 今回のお話です。

 

 

以下ただの小説感想文。(ネタバレごめんなさい)

 

32歳売れない画家の『夏目』。

男に自分をゆだね醜い部分をさらし、結果振られて深く傷つく

そんな失恋を、何度も繰り返してきた彼女は、誰かにのめりこむことを極端に恐れている。

 

彼女の本能は、間島の描いた

大きく光る富士山の絵を見た瞬間、恋の予感を感じる。

 

彼にしか生み出せない感動を強く求め、感じたいと願う。 

しかし、彼には恋人が居た。

恋人がいる人を好きになる。その地獄は、とてつもなく辛い。

希望が、足りない。

 

「友人」としての日々を続けるうちに感じる居心地の良さと、心強さ。

恋人がいるんだから、「好き」と伝えてはならない、と思う。

その考えとは裏腹に、彼の気配だけで、上がる口角。

だからこそ、願う。「届け、届け」想いよ!

 

彼女は、彼に出会うことで、自由になる。

 

これまで、なんとなく描いてた絵。

なんとなく生きていた日々。

なんとなく感じていたこと。

 

彼に出会って、命の火種が着火する。

「描きたい」「生きたい」「伝えたい」

 

彼女の本能は、彼女がいる彼に、「好き」と伝えたがる。

 

ついに放たれた「僕も好きです」と言う、間島の言葉を聞くだけで、

「自分の体が、地面の、もっともっと底に、溶け落ちてしまう」ほど

熱くなる、夏目。(この表現!人間の神秘!!恋ってステキ!!)

 

哀しい予感を抱きしめながら、二人で過ごす日々。

 

間島の暗く大きな陰の理由を知る。

間島の恋人は、種違いの自閉症の妹だった。

 

誰に強制されたわけでもないが、たくさんの哀しみと恐怖を経験してきた間島は、まっすぐに生きることしかできない。

中途半端な行動や想いに恐れを抱き続けた彼にとって、責任感のない関わりは、恐ろしいもので。まっすぐな間島は、「責任」にがんじがらめになっていた。

 

要領よく生きること。皆より少し、楽をして生きることが、正しいとされる社会では、やはり浮く間島。

そんな間島を、好きで、好きで。本能で愛している夏目。

「彼自身作品なら、額に入れる必要もなかった。」

(好きすぎるとそうなるか。。) 

 

「透明な気持ちで、動物的な慶びの高みまで連れて行ってくれたもの」

 

を、見て、触れて、感じた「自分」を信じる。

 

「何かを選んで、何かを選ばなかったことに、自身で責任を負わなければいけない。

自分が、決めたんやって、それが自分の意見なんやって、揺らがず、思ってんとあかん。」

  

そのとき自分が想った、感じた、笑った、泣いた、

その感情に責任を持って、向き合って、命の火種に責任もって火を灯し続ける。

 

それぞれのエゴがどう反応するか、誰にもわからないからこそ。

責任を持って想い、願うことしか、できないからこそ、

その「想い」は、発光している。

 

発光した、純度の高い「想い」を持つものを、「馬鹿」と呼ぶ社会。

 

そんな社会で、自分の考えに責任を持って、発光している想いは、決して馬鹿ではない!

 

と、はっ、とさせられる、西加奈子『白いしるし』でした。

  

家族や恋人と向き合う責任は重く、次元の違った深さがある。

だからこそ、そんな厄介なものは、避け、楽なほうに行くこともできる。

でも私も本能に従い、

まっすぐぶつかる強さと勇気を持ちたい!と間島と出会った夏目のように思った。

本能にぶつかることは、なにも恥ずかしくない!

 

夢を持つこと。執着すること。

そんなこれまた、要領の悪いことは、馬鹿らしい、と思うこともある。

でも、想い、願う。その姿は、発光していて、極端に美しい。

お金では計れない、社会の額には収まらない、強さがある。

 

それを見て、美しいと思うか否かは、私自身のエゴによるもの。

でも、その光の強さを美しいと思う私を、責任を持って信じたい。

 

皆それぞれエゴがあるからこそ、感じ方も違い、惹かれる人も違う。

わたしのエゴが私と関わる人のエゴによって相殺されたなら、それは大成功だし、

そうなるようにたくさんの人や、作品に触れて感じることで、より強く自分の感性を、本能を、尊く思おう。

そして、たくさんのエゴと共に、たくさんの想いと共に、

たくさんの慶び、哀しみ、と共に、精一杯生きようと思った、

まっすぐに人と向き合いたくなる一冊でした。

 

 

 

p.s. 西さんの生きてる世界がこれくらい真っすぐで、希望がある世界なら

私はそこへ行きたい!!!といつも思うのです。ああ西さんと飲みたい。